辞書: 正当にこわがる

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正当にこわがるとは

寺田寅彦氏の随筆「小爆発二件」に出てくる表現です。

十時過ぎの汽車で帰京しようとして沓掛駅で待ち合わせていたら、 今浅間からおりて来たらしい学生をつかまえて駅員が爆発当時の模様を聞き取っていた。 爆発当時その学生はもう小浅間のふもとまでおりていたから なんのことはなかったそうである。その時別に四人連れの登山者が登山道を上りかけていたが、 爆発しても平気でのぼって行ったそうである。 「なになんでもないですよ、大丈夫ですよ」と学生がさも請け合ったように言ったのに対して、 駅員は急におごそかな表情をして、静かに首を左右にふりながら 「いや、そうでないです、そうでないです。――いやどうもありがとう」 と言いながら何か書き留めていた手帳をかくしに収めた。

ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、 正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた。 ○○の○○○○に対するのでも△△の△△△△△に対するのでも、やはりそんな気がする。

客観確率と主観確率

「正しく恐れる」という表現もありますが、これは自分の中では、 主観確率と客観確率という2つの考え方が必要だと思いました。

この随筆の場合、客観確率的には、登ってもまず大丈夫です。 しかし、1度事故が起きてしまうと、それは大問題です。 その意味では、主観確率的には、無視してはいけない問題とも言えます。

しかし、「無視してはいけない問題」という判断ができるのは、 客観的な判断ができる人だけです。 危険を煽られて正常な判断ができない人を肯定するものではありません。

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