知識労働者の生産性を高める方法

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知識労働は三種類ある

プロフェッショナルの条件p61「Part2 1章 生産性をいかにして高めるか」によれば、 ドラッカーは知識労働を3つに分類しています。

第一に、知識労働のいくつかにおいては、仕事の成果は純粋に質の問題である。 (中略) 第二に、質と量をともに成果とすべき知識労働が幅広く存在する。 (中略) 第三に、生命保険会社の保険金支払い、病院のベッドメーキングなど、その成果が肉体労働と同種の仕事が多数ある。

ドラッカーは、1.の例として、新薬の研究所を挙げています。 世界を変える優れた新薬を出すことが、何より重視される仕事です。 3.の例としては、生命保険会社の保険支払い、 病院のベッドメーキングといった定型的な仕事を挙げています。

ほとんどの知識労働には「作業労働」がある

また、「知識労働のいくつかにおいては」と書かれていることから、 ドラッカーは「仕事の質だけの労働」が例外的で、 ほとんどの知識労働にとっては、成果に仕事の量が含まれると言っています。

例えば、プログラマーにとってプログラムの質は重要です。 しかし、品質にこだわりすぎて、プログラムが完成しないと意味がありません。 よって、プログラマーは質と量の両方の観点が必要です1

また、大企業は一人一人のやることが細分化されていますが、 中小企業やベンチャー企業の場合は1人がいろいろな仕事を担当しています。 その中には、作業労働的な仕事が多く含まれています2

よって、多くの知識労働者の仕事には、「作業労働」が含まれています。

「作業労働」の改善が生産性向上の近道

ドラッカーは、作業労働の生産性は容易に上げられると言っています。

また、成果が質と量の両方を意味する仕事については、「何が役に立つか」を 問うと同時に、仕事のプロセスを一つひとつ分析することが必要である。

(中略)

生産性向上は、作業を分解し、分析し、組み立て直すことによって実現できる。 知識労働の生産性は、このように取り組むならば、容易に向上させられる。 生産性は一挙に向上する。

もちろん、何が役に立つかを考えることは重要です。 しかし、生産性向上のためには、作業を分解し、分析し、 組み立て直すというプロセスは欠かせません。

ところが、この作業労働の改善をやっている人はほとんど見たことありません。 製造業で絶え間ない改善が行われているのとは真逆です。 日本は製造業の生産性が高く、知識労働の生産性が低いと言われますが。 その根本的な原因は、この作業労働の改善を行っていないからです。

Appleもプロセスを重視している

Appleは製品によるイノベーションを重視し、 自由な社風だと思われていますが、 それは、必ずしもプロセスが不要ということではありません。

スティーブ・ジョブズも次のように言っています3

The system is that there is no system. That doesn’t mean we don’t have process. Apple is a very disciplined company, and we have great processes. But that’s not what it’s about. Process makes you more efficient.

この引用はイノベーションに対する回答ですが、 ジョブズはプロセスを軽視したわけではありません。 イノベーションと改善は、車の両輪のようなものです。

参考文献


  1. 実際は優秀なプログラマーほど作業量も多いですが。 ↩︎

  2. 自分も開発から保守まで多くの仕事をしています。 ↩︎

  3. Steve Jobs - Wikiquote ↩︎

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